スウェーデン高齢者福祉(福祉研究所)



 SCIプロジェクトマネージャー.ヨアキム.カウト氏より説明を受ける。
 スウェーデンは第1次世界大戦、第2次世界大戦共に戦争に参加しなかった為、労働人口が豊富で、しかも戦後他国の復旧の為大いに産業が活気づき国としては沢山の収益が上がった。
 1950年代から高齢者社会が進み、1960年頃より女性が働くことが常識になって専業主婦が居なくなったので社会福祉を しなければ成らなくなった。そこで豊富な財力をどうしようかと考えた末、社会福祉に使うことを決めたのである。

 初期の頃は高齢者は患者(4人部屋)として扱われ病院に収容されたが高齢者達の意見を聞き、高齢者達が自宅で生活できる様な提案をしてきた。
 スウェーデンには高齢者ケア.身体障害者.知的障害者ケアを担当する290のコミューン(市町村自治体)があり、医療ケアを担当する21のラスティング(県)がある。

[高齢者ケア]
 高齢者で施設ケアを受けているのは98、600人で、在宅ケアを受けているのは14万人である。またショートステイの為の 施設は9、000人分、デイケアセンターには12、800人が使える施設がある。これらに掛かるスタッフは25万人居る。またこれらに掛かるコストは210億USD(日本円で2、247億円)(GDPの6.3%)なのである。

[身体障害者ケア]
 身体障害者の人達のために障害者研究所がありここでは身体障害者のための治療やリハビリ、また福祉用具の研究.開発.テスティング.調達も行っている。使える物は古くなっても修理や改修して次の人達のために使用するのである。
 また、身体障害者が使いやすいように住宅改修やショートステイの為の施設や特別な住まいの提供、情報やトレーニングの提供もするのである。

[知的障害者ケア]
 認知症は認識力の低下.感情の機能によりその症状は様々である。
 80歳以上の人々の内20%は痴呆になると言われている。認知症の方のためにはグループリビングが設けられている。この施設は特別にデザインされ整備されている。
 1.居住者の個人居室
 2.プライベートエリア
 3.共同エリア
施設はこの3つの異なる空間から構成されていて、居住者は居室に自分個人の家具を置くことが出来る。また各居室には機能的なバスルームが設置されているのである。施設の中央には家庭的な雰囲気のキッチンが作られていて生活の場.ケアの場としての家造りがされている。
 全職員には良質のトレーニングプログラムが配置され効率的でよりヒューマンな施設となるよう努力がなされている。
 またIT-ケアにおけるケアTVの検討もなされている。

 国内には6〜7の大きな年金受給者協会がある。
 年金受給者協会には老人達の委員会があり、国はその人達の意見を聞かなければ成らない義務があるのである。
 今後は老人が増えていくから老人達の意見が強くなっていくと予想している。

社会ケアサービスのスウェーデンモデルとしては
 1.児童及び虚弱な高齢者のための公共助成サービスは、幅広く利用する事が
   できる。
 1.社会経済的な状態を問わず、全ての人が必要な時に同じサービスを使う
   ことができる。
 1.サービス提供は自治体が責任を持つこととし、また自治体は徴税権を有する
   など、自治体の上で非常に大きな権限を持っている。
等がスウェーデン社会福祉制度の基礎になっている。

 スウェーデンでは1990年代に年金改革が行われた。
 スウェーデンにおける年金は一元化しているのである。保障される年金は6、976SEK/月(日本円で約139,700円)であり社会ケアの最高限度額は1、544SEK/月である。また医療ケアの最高限度額は900SK/年である。家賃やケアへの支払い後の残金は少なくても4、162SEKである。
 年金制度は少ない場合、国から補助金を出して貰えるのである。しかし、年金税は34%くらい取られるのである。
 スウェーデンにおける直接税は30〜40パーセントであり消費税は25パーセントである。また定年制度があり65歳が定年である(平均定年は現在62歳)。

 スウェーデンでも高齢者人口は今後とも緩やかな速度で益々増加して行くであろう上で、一生を通じて年金を受給するためには、受給する値段が安くなるだろうと考え、ファンドや株式にも投資するようになって来たのである。
 また現在の施設は1割くらいが民間委託されて来ている。サービスは市営も民間も同じサービスを受けることができるが、民間施設は4年契約と成っている。

 今後の対策としては、限られた資源を一番ニーズにあった所にフォーカスしていく事、つまり生活の場.ケアの場として、  家の活用やケアTVを使っての在宅ケア.効率的でよりヒューマン的なグループリビングの様な施設作りを行って行かなければならないのである。
 福祉国家スウェーデンと言えども「誰にでも豊富なサービスを」と言う状況は難しくなって来ているのである。


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