クスターンタルタノ老人ホーム



 クスターンタルタノ老人ホームは市立の老人ホームで敷地面積は8ヘクタールもある。その中に13棟の施設がある。ヘルシンキでは在宅ケアと施設ケアがあり、ここに入る人達は家では本当に生活できない人達ばかりなのである。
 以前は医者が理事長として組織をまとめていたが、今はケアーマネージャーが組織をまとめている。
 ヘルシンキ市にはここ以外に独自に運営している施設が3カ所ある。その他にはヘルシンキが外注している民間施設がある。合計で2、400人が入居可能な施設を作っている。
 最近は民間老人ホームも増えて来ているが、公立と民間の老人ホームのサービスの差はなく、民間の場合は自分のお金で入るから順番を待たなくて良いし、また自分の好きな部屋を自由に選べる。そのくらいの差である。
 この施設は1953年に出来た建物で、建物はかなり古くて外部は昔のままであるが、内部は何回も改造して使っている。又部屋は自分の家のように使用でき家具などは自分で気に入った物を置くことも出来き、いわば自宅で住んでいるような雰囲気を作っている。病院関連サービスも併せ持つ老人ホームではあるが、それでも駄目な場合は病院へ紹介されて移送される。年を取ってここで亡くなる老人は毎年100人くらい居る。8カ所の施設移動は夏場は庭の中にある道を通って移動するのであるが、雨や雪が降っても移動できるように地下トンネルで繋がっている、トンネルを使って移動できる施設はフィンランドではここが初めての施設である。
 ここを現在利用しているのは615人で、その内ショートステイは615人の内41人が認知症を持っている患者でここに通っている。ここに滞在している平均年齢は84歳である。その内90歳以上が25パーセント居る。最年長は102歳であって、この前までは104歳の方がいた。
 認知症の割合は65歳以下の人が2パーセントである。男性の割合は24パーセント、女性は76パーセントである。
 第2次世界大戦で戦った兵隊の皆さんの為の施設は別に用意されている。
 ここで生活する平均期間は3年から4年であるが、ヘルシンキの目標としては施設生活は2年間としている。
 在宅ケアで一番問題になるのは在宅にいると高齢者は余り食事を取らなくなる。それによって健康が悪くなり老人ホームに来るようになる。しかしまた元気になると家に帰って貰う。
 ここにいる老人の70パーセントは何らかの認知症を持っている。それ以外の健康な方には出来るだけ在宅ケアで暮らせるような政策を考えている。
 この施設には33のケアーユニットがあり、スタッフは500名、内老人ホームには350名が居る。看護ユニットは10人くらいで1つのグループを作っている。だいたいは1人部屋であるが必要に応じて2.3人部屋もある。
 看護師は24時間態勢で3交代をしていて5人が1人を見ている事になる。スタッフは看護師が25パーセント、准看護師が15パーセント、60パーセントが介護士である。残りは手助けをする人達である。看護師になる為には大学を卒業しなくてはならない、また准看護師になる為には専門職業学校を出なければ成らない。
 現状は看護師が足りない。その他には老人専門の医師が2人働いている。しかし足りないときにはアウトソーシングで医師を1人雇っている。その他にはリハビリ関係の人達も働いている。その他に牧師さんも2名、イベント担当者も2名居る。その他、老人ホーム以外にも自宅で生活する為の準備をするショートステイが有り、ここでは長くて3ヶ月間の訓練をしている。
 その結果病院からここを経由して80パーセントの人達が家に帰って生活している。舞い戻ってくるのは20パーセントで結構、良い結果が出ている。
 ディ.ケアは周辺の方々が1週間に60名の方達が利用している。60名とは延べ人数である。この施設もやはり在宅ケアで出来るだけ長く居られる為のリハビリ施設である。

 その他にもサービスセンターがあり、ここを利用できる方はヘルシンキの職員を退職された方を始め失業者や色んな方がサービスを受ける事が出来る。これはボランティアの方がやるか民間の方達がやるべき事であるがヘルシンキではまだそう言う意識が少ない。

 このセンターでは、安い値段でお昼を食べる事ができる。その他運動をサポートするグループがあって水泳や運動に人気がある。また手を使って編み物をするグループやミシンを使ってクラフトするグループもある。遠足や音楽のイベントを企画して楽しむグループもある。また、金曜日にはソーシャルカフェと言うものが設けられてここでお互いが出会う事も出来るのである。

 ビジョンとして老人医学に関する技術開発を行っている。
 例えばG棟の建物には改築時に床の下に歩行センサーを導入し、夢遊病者や認知症の事故を未然に防ぐ装置を取り付けている。特に夜の時間帯に役立っている。例えば夜にベッドから落ちたり夢遊病者が夜中に勝手に歩き出してもすぐに判るのである。
 また、エスポーでもありましたケアTVを導入する予定もあり、在宅における在宅ケアの充実にも積極的に取り組んでいく。また、スタッフのトレーニングは、専門的な人を呼んで常にトレーニングを積んでいるとの事である。

 ここの看護の特徴としては、一人一人独自の個人性を高め、与えられた仕事を完璧にこなせるようにしている。例え寝たきりの人でもできる事はさせて、少しでもみんなとコミュニケーションが取れるような手助けをしていく。
 また、患者や看護師も一緒になって食事もし、寝たきりにならないような環境作りに努めている。1つのユニットが家族のような雰囲気で生活できる環境を作っている。
 また、入所する時には個人個人の独自のケアプランを作り、その人にあった生活指導をしていく。足の不自由な方であれば毎日廊下を歩かせたりしてリハビリを行っている。
 また、家族の方とも話し合い、どんなサービスができるかも家族の方に伝える。その他、ここで住まいをしている方にもアンケート調査を行い指導方法を変えていく。

 ここではアメリカで開発された評価システムソフト.「ライ」を2001年から使っている。このライを使う事によって色んな国にある老人ホームがそこで提供するサービスの品質を比較できるシステムのソフトである。それによってここのレベルが少し高いのが結果として判った。

 また、ここでもテレビ技術が使われており、ケアTVでは3つのチャンネルがあり、1つのチャンネルはいつも外の風景を見る事が出来、又1つには老人放送でここで行っている事も見れるし、また3チャンネルではここの重役.専務の会議もライブで住民が見て会議中にコメントをする事が出来る。世界では他には行政の会議に対してコメントが出来る国は無いと思う。

 ここのコストは2007年の予算で2、400万ユーロである。
自己負担は収入によって金額が決まるが、長期ステイの場合は収入の約80パーセントを支払い、最高では3、207ユーロ、日本円にして54万円くらいである。実際この位払う人は少ない。
 国民年金を貰っている人は月々600ユーロであるからその80パーセント480ユーロを支払う。残った120ユーロが自分で自由になるお金である。
 また、ショートステイの場合は1日26ユーロである。
 この施設で生活するには600ユーロあれば生活できるが、この金額で在宅だと少し厳しいものがある。フィンランドではボランティア活動は本当に少ないがカナダではボランティアが多くいる。フィンランドでもこれからはボランティアを増やして行かなくてはならないのである。


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