エスポー市児童福祉施設


セイリマキ.デイケアセンター

 セイリマキ.ディケアセンターは静かな森の中にあり敷地面積も広くて子供達は寒くても戸外でのびのびと色んな遊びをしている。子供達を初め保育園指導員は我々視察団が来るからとフィンランドの旗と日本の旗を作って『こんにちは』と小さな子供達も日本語で温かく迎えてくれた。

 現在セイリマキ.ディケアセンターで預かっている園児の数は76名、スタッフは19名である。
 エスポー市では男性の保育士は非常に少ない。入所している園児は10ヶ月から6歳までの子どもで、19名のスタッフを1歳.2歳.3歳.4歳.5歳と言う風に年齢ごとに5つのグループに分け保育している。3歳児未満は1人で4人、3歳児以上は1人が7名を受け持つ。
 この地区の子ども達は月曜日から金曜日まで毎日ここに来ている。殆どの子ども達はAM7時30分〜PM5時まで預かっているので親御さん達は5時までには迎えに来る。その他色んなパターンがあり週4日間だけ預けに来る子どももいる、日本で言う一時保育である。
 また保育所を選ぶのは親に権利があり私立にするか公立にするかは親が決めている。6歳児に対しては幼稚園式の保育もある。
 また保育園に預けずに家で保育する場合も補助金が出るとの事である。
 大まかに分けて自治体保育、私立保育、一時保育、家庭保育の4つの幼児保育が行われている。
エスポーの場合は約4割が自治体保育を受けており調査結果によると、親達はこの自治体保育に満足をしている。7パーセントがファミリーディケアーと言って小グループで保育士が自分の家で4人か5人の子ども達を預かるので自治体の保育は47パーセントになる。
 フィンランドでは、1990年にできた法律として3歳未満の幼児には自治体として保育を提供をしなくてはならない義務がある。

 幼稚園の先生になるためには4年制の大学を出た修士号を持った人でないとなれない、また保育士は3年以上の専門学校を卒業した人でないとなれないのである。
 質の高い保育を提供するためには素晴らしいスタッフと環境(保育するスペース)も充分で無ければならないのである。
 また職員に対しても時々保育のトレーニングを行い、たえず保育技術向上に向け努力をしている。

 3歳児未満が入所する場合、親と保育士とが話し合い、この子が保育園でどこまで出来るようになれば良いのか話し合いをする。
 例えば自分で着替えが出来る、自分で食事が出来るようにする、言葉がちゃんと話せるようになる社会的なものとか、親と一緒に目標を立て書類に書き込むのである。それに基づき幼児一人一人にあった保育を先生達が進めていくのである。そして新学期は9月から始まるので、9月に親達や幼児一人一人と会って計画を立てこういったことを決める。
 6歳になると先生と親が、子供が1年生になる前にどの位の知識や考え方を持っているのか話し合いを持つ。そして子供の状態を見ながら普通の小学校に入るためのディケアやサポートが行われ、その情報は保健所や小学校にも送られる。
 言葉ではなく書類で伝える事でより正確さを増す。
 1年間の状況を見て子供にあった学校.専門学校.特別学校を選ぶのである。
 保育費用は子供の人数や親の両方の収入合計によって決まる。収入がない場合は無料、最高で一人当たり月に34、000円位である。子供が二人の場合は、上の子が200ユーロ(34、000円)で、次の子は180ユーロで合計380ユーロを払う。実際は平均で200ユーロを払っている人が90パーセントである 。
 ちなみに平均的夫婦共稼ぎの場合の収入は、男性が2、300ユーロ(39万円)女性が2、000ユーロ(34万円)で合計73万円である。
 これに掛かる直接税は45パーセントで、手取りは二人で40万余りである。二人の合計が3、875ユーロ以上の場合は、二人目の保育費用も200ユーロである。

 一人当たりに掛かる年間費用は約160万円(人件費.メンテナンス.朝食.昼食.夕食費.おやつ費用を含む)である。自治体負担率は約75パーセントである。日本より一人当たり単価は少し高いようである。

 現在管轄しているのは保育所も幼稚園も厚生省の管轄で将来は文部省の管轄に入る予定である。幼稚園と言ってもフィンランドではフリースクールと言い、学校に入る前の幼稚園で、4時間は幼児教育で後の2時間は保育時間となる。つまり幼保一体化である。
 3歳までは託児所的で、3歳から5歳までは保育園で行う事と同じような事をする。カリキュラムもしっかりした物がある。保育士の子供に対するいじめに関しては、スタッフ同士の監視が厳しく、また規制が厳しいので特に大きな問題は無い。またいじめ問題にならないにしても、もし実際に問題が起これば直ちに解決するような指導を行う対策は取っている。
 エスポーに住んでいる人達はレベルの高い人達が多く、PTA活動(運動会やクリスマス.スポーツ大会.バザー)が盛んでコミュニケーションも多く、大きな問題は特にないとの事である。
 保育士になるためには、国立大学の幼稚園教諭科の40倍の厳しい試験をクリアーしなければならないのでなかなかなれないとの事、また園には3人に1人は幼稚園教諭資格者が義務づけられている。

 現在困っている事は、今まで以上に子供を預ける人が多くなって施設が足りなくなってきたとの事である。入りきれない子供達は、臨時的に子供のグループホーム的な施設(民間の家などを借り受け保育する)で保育をしている。
 行政は子供が4ヶ月を越えると、要望があれば2週間以内に保育施設を与えなければならない義務がある。産休は出産1ヶ月前から出産後8ヶ月、合計で9ヶ月取れる。また育休は3歳前まで取れる権利があり、休業中の給与は60パーセントまでは貰える。また産休明け.育休明け後の仕事のポストも保障されている。


欧州視察調査報告書へ戻る目次へ戻る