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海外視察調査報告書 イギリス ロンドン市
『PFI方式による高校建設』について
英国における学校教育制度は日本と異なり、学校は、学校経営という一つの企業である。
学校長は教育委員会から任命されるのではなく、地元のボランティアで構成されている運営委員会・理事会から選出され、教員は直接、学校長が任命するとのことである。
したがって、教員は公務員ではなく、学校長や理事者の権限で教員の労働条件も左右されるのである。
また、就園・就学については、幼稚園は3歳児から、小学校は5歳児を1年生と呼び、6年生で終わる。日本でいう中学生までは義務教育であり、7年生から始まり11年生(年齢は11歳から15歳)までである。義務教育を終了すると就職も進学も自由に選択できる。
日本の高校に当たるハイスクールは、16歳から18歳を対象に高校教育を行っている。ただ、11年生(15歳)になると受験する資格ができ、合格すれば高校へ進学できる。他の中学校からも高校を受験して転入することもできる。ただし、高校は義務教育ではないが、授業料は要らないとのことである。
さて、今回視察したBARNHILL COMMUNITY HIGH SCHOOLは、ミドリ.シックス県地域にあり、以前からこの地域は学校が少なく、教育の場が不足しているということで、1995年に、地元選出国会議員が学校建設の話を住宅供給公庫に持ちかけた。建設に当たっては、公庫の指導もあって、民間の資金を利用しようという案が提案された。世界で初めての民間活力導入による学校建設の試みである。
構想から5年という歳月をかけ、細部にわたり要望を出し、多くの企業が参入し、コンペを繰り返し、最後に残った2社で再度綿密な打ち合わせをした。最後に残ったのが地元の企業、ジャービスであった。
この会社の概要は、国内大手の会社であり、世界中でホテルチェーンを経営するとともに、建設会社も持ち、マネージメントもする総合会社である。
契約に当たっては弁護士や法律事務所も入って貰い、将来にわたってのサービス内容を設定し、個々についての具体的な取り決めなど、細部にわたり協議の上、契約を交わすという大仕事であった。
このことから、大企業でないとこの事業の参入は不可能であると感じた。
1998年から建設工事を着工し、1999年には、中学校として生徒180人で開校し、地域に開かれた学校として、施設の一部を開放した。
2000年9月には、7年生から11年生まで1150人となった。また2004年9月からは高校部門をスタートさせるとのことであった。
建物の管理は、ジャービス社が管理会社をつくり、管理員男性3名、マネージャー1名、技術者1名、渉外1名、計6名で管理運営をしている。運営等は、全て管理会社に一任している。教室や学校施設の貸し出しを行うことについては、学校と協議し、地元の会合を初め、結婚式等に有料で貸し出しをしている。年間日本円で800万円までは利益を上げても良いが、それ以上の利益があった場合は、合議の上で学校側に寄附するシステムである。ちなみに昨年度も今年度も収入は800万円を超過しているとのことであった。
資金の流れは、まず中央政府より教育長へ渡され、教育長は直接、学校長に渡す。校長はいろいろな経費を差し引き、企業へローンとして毎月返済する。返済に関しては、行政側はノータッチである。25年間で建設費は完済することになる。その間、管理会社は学校の修繕補修、維持管理に努め、新しい状態で市へ返納するシステムである。
以上のことからPFI方式で高校を建設するということは資金的には楽かもしれないが、建設までに長い年月を必要とし、大企業にしかできないというデメリットも大きいのである。また地元企業育成ということからしても、まだまだ不十分であり、検討していくことが重要であると感じた。
こうした観点からも、今、徳島市で建設を計画している、PFI方式による高校改築に際しては、十分な調査や検討はいうまでもなく、生徒や保護者、現場の教職員や関係者の意見を十分に反映させ、学校利用者、特に生徒にとって、安全性、利便性の高い快適な学習空間をつくり、市立高校としての特性を生かした素晴らしい学校建設を推進されるよう、団員一同強く望むものである。
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