海外視察調査報告書 ドイツ・フライブルグ市
 『環境政策』について


 フライブルグ市は900年の歴史を持ち、フランス国境まで約30q、スイス国境へ約40qに位置し、人口は20万8000人である。第二次世界大戦では市街の80%以上が壊され、新しく町が再建されたのである。

 30年前、州立の原子力発電設置計画への反対運動が発端となり、ドイツで初めて環境局を設置し、高い住民意識を背景に先進的な環境政策を推進し、環境づくりをメインとした町づくりに取り組んだのである。

 環境対策は、1交通対策、2都市対策、3ゴミ・廃棄物処理対策、4エネルギー利用対策、5森林対策の5つを大きな柱にしている。

1 交通対策
 交通対策としては車の利用制限を行っている。フライブルグ市内の主要道路以外、特に住宅地域を速度30qゾーンとして車両を規制し、空気の汚染を減少させ、環境保全に努め、市民の快適な生活空間の確保を目指している。
 そのため以前からあった住宅地域の道幅を狭くし、真っ直ぐな道をわざわざ蛇行させ、整備をし直した。自転車道路や歩道を広げて車がスピードを出して走れないようにつくり替えられている。さらに、所どころに監視カメラが設置されており、違反者には重い罰則が科せられるのである。

 次に、公共交通機関である路面電車や路線バスを拡張し、乗用車利用者の公共交通機関への乗り換えを奨励している。「Regio環境カード」という定期券を発行し、全長2900qの範囲内で有効で、譲渡することも可能である。また週末には家族全員が利用して乗り放題などユニークな発想を具体化している。
 さらに、市電優先の信号機を多くし、運行時間の短縮を図っていた。

 次に自転車の奨励である。
 自転車専用道路を163qにわたり整備するとともに、自転車が通行しやすいような段差の少ないつくりになっている。また市内の自転車駐輪場を整備し、いつでも誰でも気軽に利用できるように拡張・増設している。

 一方、市内の駐車場は削減している。
 車の市内乗り入れを制限するために従来からある駐車場を減らし、その場所に駐輪場を設置した。現在、路上に設置の駐車場は駐車料金を高くして、短時間利用を促進しているのである。
 一説によればストラスブールのパーク&ライドは、このフライブルクを参考にしたともいわれている。

2 都市対策
 緑化対策、居住地の対策、環境保護対策等、環境保全に基づいた全ての建設対策が様々な局で実施されている。
 住宅開発の成功例としては都市区域と駐車場問題を解決したKonvikstasse(コンヴィクト通り)周辺の例があげられる。スラム化して老朽化していた住宅地区を、当時の問題点であった駐車場の可能性と市内での快適な生活空間の確保という点を重視し開発した。約600台収容のシュロスベルクガレージを地上3階、地下2階建てで建設し、その3階部分を自然とうまく調和した美しい住宅にした。ここは、町のほぼ中心にあるため、徒歩で市街の中心部に出られ、快適な住居として人気がある。
 また、市の都市計画局は、地下工事局や環境局とも連絡を取りながら環境保全を軸とした対策を練っている。

3 ゴミ・廃棄物処理対策
 空気汚染の配慮から原則的に焼却は行っていない。産業廃棄物でも家庭ゴミでも、基本的にはゴミ収集税を設け、ゴミを出さない対策を前提にした処理法を実践している。住民の意識を促す方法を考え、官民協同での対策をリサイクリングシステムに基づいたゴミ分離収集システムにより処理している。

○分離収集システム
 バケツの色を変えて捨てるゴミを分けている。
 回収は週1〜2回程度で間に合う。
 ゴミは有料である。ゴミ排出量によって支払額が違うのである。(利用税徴収制度)
 ゴミ関係の費用は全て利用税徴収制度の中で支出されており、行政側からの負担はないのである。

○ゴミ埋立地とエネルギー再利用
埋立地の地中から出るメタンガスをエネルギーとして再利用し、市の一地区(ランドヴァッサー地区)の暖房、発電に利用している。

○ゴミを出さないキャンペーン
 環境局は様々な広報活動で、住民との一体化対策を行い、住民意識の向上、啓発活動に努めている。特に環境教育を重視し、幼稚園や学校と連携し、環境プログラムを作成し指導している。また、ゴミ処理カレンダーを作成し、家庭に配布するなどの方法で、とにかくゴミは出さない、つくらないことをパンフレットなどにより呼びかけしている。

○リサイクリング仕分け業RWE UmweltFreiburg 会社
 グリューネトンネ(リサイクリング専用バケツ)で収集された再生できるゴミ(紙、プラスチック、金属、アルミ、テトラパック)を仕分けし、リサイクリング会社にそれぞれ送っている。

○建設廃棄物リサイクリング業FEBA(フェーバ)社
 建設廃棄物として出るゴミのうち、土や石、煉瓦等を仕分けして砕いて再利用し、歩道の砂利などとして自然に還る方法が取られている。

4 エネルギー利用対策
 フライブルク市は地方単位でのエネルギー対策と原子力エネルギー反対の住民運動を背景に、環境局、市、物理研究所等と連携して省エネ対策を検討しており、環境を軸とした現存のエネルギー対策・代替エネルギーの開発を促進している。
 現在50%がローカル発電で賄われている。

○コージュネーレーションシステム
 Landwasser居住区(人口約9000人)はこのシステムにより地域暖房・発電を実現した。市内より4.5qの所にあるゴミ埋め立て地より腐敗ガスを集めることで可能となり、総費用2100万マルクで1991年春に完成した。夏にはこのゴミガスで十分この地域のエネルギーを賄え、冬場は天然ガスを補充して供給している。

○太陽エネルギー(ソーラーシステム)
 フラウンホーファ物理研究所の太陽エネルギー部門の開発により、自給自足型というコンセプトのもと、ソーラーハウスを建設し、新しい蓄熱システムを導入した。現在ソーラーシティーと呼ばれる町として、個性ある建物や団地計画も次々と進んでいる。

○水力発電開発
 シュヴァルツヴァルトからフライブルク市内を通ってライン川に流れ込む支流のドライザム川の水力をエネルギーとして活用している。

○風力発電
 新しい再生可能なエネルギーとして、大きな設備6機が新たに建設された。

6 その他
 農業対策、飲料水対策、景観保護対策等、多岐にわたっての環境公害対策がとられている。
 国の買電政策でいろいろな自家発電に企業や個人が参画して、民間からの知恵や意見を組み入れていったのである。

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